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東方酔蝶華37&38話語り第1編 ~飯綱丸様と射命丸文編~

こんにちは。酔蝶華37&38話、凄まじかったですね。

射命丸文はどこに向かっていくのでしょう……彼女に幸多からんことを願うばかりです。

すでにふせったーやTwitterでバカスカと喋りまくった内容ですが、今一度自分の考えをまとめておこうと思います。(自分の備忘録も兼ねてるので)

※あまりに長くなった結果、いくつか記事を分けることに。まさかこんな……

他の話題は以下のリンクから閲覧できますので、よろしくお願いします。

konton-hakusai.hatenablog.com

konton-hakusai.hatenablog.com

本記事では(1)作中時系列の整理、(2)飯綱丸様と射命丸文について自分なりに書いていこうと思います。

 

(1)作中時系列の整理

(2)にも絡んでくるので先に事実整理をします。
「ーーー」は日付の変わり目、()内は作中で明示されていませんが予想できる事柄です。

 

(妖怪の山に大量の赤土が持ちこまれる)

[夜](文ちゃんが赤土を目撃?※1)
ーーーーーーーーーー

[昼?]謎の紅雪が幻想郷全域で降った

文々。新聞発行、紅雪は自然現象の可能性が高いと報道

[夜]鯢呑亭にも新聞記事が出回る
(文ちゃんが赤土を目撃?※2)
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[昼]翌日、博麗神社で市場開催
文ちゃん&美宵ちゃんが市場へ潜入取材

[夜]鯢呑亭にて文ちゃんが美宵ちゃんと会話。取材内容確認
ーーーーーーーーーー


[昼]千亦様、妖怪の山高地へ。飯綱丸様と邂逅
二人の会話。盗み聞きしていた文ちゃんが愕然

[夜?]紅雪は赤土によるもの・自然現象とする文々。新聞が発行。里に流通

(※1、※2は時系列が確定できないため、2ヶ所示しています。※1は雪に混ぜる前の赤土を見つけた想定、※2は雪に混ぜたけど余った赤土を見つけた想定)

ちょっとは分かりやすくなったでしょうか。


個人的気になりポイント ─不安の鎮め方─

文ちゃんの紅雪第一報

『幻想郷全域に紅雪。吉凶如何に』という見出しと共に、赤い雪は珍しい自然現象の可能性が高いとの記事を書いています。「可能性が高い」という言い方なので断定していません。

38話にてこの記事は世論誘導記事だったことが判明します。作中のセリフからして、世論を誘導した理由は「紅雪に人為的な匂いを感じたから」でしょう。

そして自然を操るだなんて、人ならざる者の仕業に違いない。その疑いも記事に含めると「得体の知れない人外の思惑+赤い雪」のダブル不安を人々に与えてしまいます。
それを防ぐため「自然現象の可能性が高い」と報道し「赤い雪」の不安のみに留めた、と考えられます。

となると文ちゃんが持ちこまれた赤土の存在に気付いたのは※1の時点と考えた方が自然かもしれませんね。

博麗神社での市場開催

文ちゃんの報道は人々の不安を赤い雪にのみ結びつけましたが、これでは不十分でした。
見出しにある通り、珍しい紅雪は『吉凶如何に』なのです。その珍しい雪が意味するところまで文ちゃんは記事内でフォローしていないわけですね。

そこを補ったのが霊夢さんと千亦様による市場開催だったのです。市場というお祭りごとを開催することで紅雪をめでたいものに変えました。

突如降った紅雪は文ちゃんの報道と霊夢さん&千亦様の市場開催によって「縁起の良い自然現象」となり人々に受け入れられたのです。

……自然現象?

 

(2)飯綱丸様と射命丸文

紅雪は飯綱丸様が引き起こした人為的現象でした。

千亦様と飯綱丸様の会話を聞いていた文ちゃんはまたとない事実を掴んだわけですが、結局飯綱丸様のことを伏せた記事を出して終わってしまいました。
文ちゃんが折れた原因は間違いなく飯綱丸様の言葉にあるわけですが、一体何に文ちゃんは愕然とし、絶望したのか?

 

文ちゃんの新聞観

先に示しておきたいのが、射命丸文というキャラクターが新聞をどう書くことにこだわっているかです。

彼女は真実を追求することを第一としています。
そして基本的に、新聞で誰かを傷つけたいとは思っていません。

酔17話で命蓮寺を悪しように書いてたじゃん!というツッコミが入るかもしれませんが、あれは意図的に貶めてやろうとしたわけではありません。
彼女なりに本気で真相を掴み、かの寺の悪事(思いこみ)を白日に晒そうという使命感・勘違いがもたらした結果です。(それはそれでタチが悪いんですけど)

この誰かを傷つけたくないというのは結構彼女の根っこに近しい価値観のようです。

花映塚では新聞を書くことで事実が変わり、混乱を生むのだと映姫様に説教され、自分で真面目に考え直しています。

文果真報では自分の記事が月の民の幻想郷乗っ取り計画に利用されていると知り、週刊誌を発禁に。しかも客観的に見て捏造甚だしい記事を書いてしまい、新聞記者の本分と相反することに苦悩していました。

悪意のない嘘と混乱を撒くことはあれど、本人的には「清く正しい」新聞と新聞記者でありたいのが射命丸文ちゃんなのです。
そして意外かもしれませんが幻想郷が大好きで、平和を願っているんです。

文果真報を読んでね。

 

「悪事を知らしめるのは我々ブン屋の使命」(酔17話)なんて言ってますし、その記者活動にはかなりの正義感も含まれていそう。

実際、鈴奈庵などでは人間の混乱を鎮める方向で記事を書く姿が目立ちます。
「世界滅亡の噂に惑わされるな」と警告のつもりで新聞を出したり(鈴35話)、「私の新聞は公正さが売り」、「わざと事実を伏せることはよくありますがそれは混乱を防ぐ為にしている事」(鈴39話)と独り言を言ってたりします。

 

酔38話にて自分の取材活動が内部告発となることを分かったうえで取材をいつになく真面目顔(文ちゃんは感情が顔にモロに出るので緊張してると顔も固い。かわいい!)で行っています。
この時彼女を動かしているのは悪を暴くジャーナリズム──正義と使命なのだと思います。

逆に言うと、自分の側に正義と使命が存在しないことを突きつけられれば、文ちゃんは止まってしまうのです。

それが文果真報であり、今回の酔38話なのです。えげつなさは今回が上です。

 

飯綱丸様の言葉

飯綱丸様が千亦様に向けていた言葉によって愕然絶望した文ちゃん。
上記の新聞観とあわせて考えれば、飯綱丸様の言葉が文ちゃんから正義と使命を剥奪した、と言えそうですね。

具体的にどのセリフが?と聞かれればほぼ全部なわけなんですが……。2項目に分けて見ていきましょう。

紅雪に対する人々の動向を知っている?

そもそもだ。赤い雪は珍しい自然現象だったんだ。その事実によって里の人間の不安は半分取り除かれた。
博麗神社は市場を開いて人間の不安を完全に取り除いた。

まずはこのセリフ。
「(1)個人的気になりポイント ─不安の鎮め方─」の項目で書いたような、まんま紅雪の不安を取り除く過程を話しています。

面白いのは「『紅雪=自然現象』の事実が広まる→神社での市場開催」の流れを把握していることです。

作中において『紅雪=自然現象』の事実を広めたのは文々。新聞以外に存在しないのに、飯綱丸様はご存じ。

つまり、「文々。新聞が紅雪を報道したこと」、「その報道姿勢は自然現象の可能性を述べることで里人の不安を抑えるもの」だったと、飯綱丸様は把握してるんですね。
文ちゃん! 新聞読まれてるよ!

神社での市場開催も把握されていますが、これは飯綱丸様の目的に絡むので動向を注視するのは当然でしょう。
やはり大きいのは、飯綱丸様が射命丸文の報道内容を知っていたってことですね。
もちろん、他の天狗も似たことを報道した可能性はありますが、読者側から推測できるのは射命丸文について話していることのみです。なので今回は断定的に書かせていただきます。

それを「そもそもだ」と言って初めに示してしまうのはなかなか激しい攻撃。裏で聞いていた文ちゃんは「え」と思ったかもしれませんね。

 

報道は幻想郷に秩序をもたらさない?

そして貴方も得をした。それらの現実を全て捨てて、赤い雪は天狗の仕業だとする報道をして何の意味がある?
安定した幻想郷を再び混乱に陥れるだけの報道に、何の意味があるんだ?

次にこのセリフ。
こちらも文ちゃんにクリティカルヒットする内容です。文ちゃんの新聞観に思いっきりぶっ刺さるからです。

すでに述べたように、文ちゃんは里人の不安を和らげるために世論誘導記事を書きました。その目的はひとえに「人間の不安と混乱を抑えること」にあります。

幻想郷大好きな文ちゃんはこんなセリフを残しています。

幻想郷の存続、保守を声高に訴えた誇張記事の所為で、結果それが月の民に利用され、幻想郷を危機に晒してしまう事態が来てしまうなんて、洒落にもならないだろう(東方文果真報 顛末書)

文ちゃんの思考が暴走気味の文果真報において保守に傾くのですから相当に幻想郷が好き。

自分の報道で混乱や害を振り撒くことを文ちゃんは望んでいないんですね。(現実はさておき)

 

そこで、飯綱丸様のセリフなのです。
「安定した幻想郷を再び混乱に陥れるだけの報道に、何の意味があるんだ?」

射命丸文は人間の混乱を防ぎ、秩序をもたらす記事を書く傾向にあります。そして今回の内部告発は正義感・使命感に駆られた結果やるつもりでした。

なのに「真実を暴く者がかえって悪になる。真実を暴く者に正義はない」と飯綱丸様はご丁寧に示したわけです。

射命丸文に正義はない。むしろ報道するなら悪。
そして「心躍る悪人」も不在のため、「内部告発=悪事を知らしめる」使命もなくなる。

内部告発:組織内の人間が公益保護を目的として、所属組織の悪事や不正を外部へ周知させること

悪事も不正もないし、みんなすでに得をしてるのだから公益保護にもならない。それでも報道するならそいつは馬鹿で愚か者なんです。

射命丸文、八方塞がり!

 

精神的逃げ場のない文ちゃん

文果真報の件より今回の方が凶悪で救いがないのは、文ちゃんに精神的逃げ場がないことです。

天狗の報道機関は悪戯に事実を曝いて話題を集める機関ではない。
幻想郷の為になる公共性の高い機関だ。
私の部下に、それが分からぬ愚か者などいないさ。

飯綱丸様は文ちゃんが紅雪事件でも「秩序を守る」動きを初動でしたことを知っています。そこで文ちゃんの姿勢を見極めたうえで、この言葉を選んだかもしれないのです。

自分の役割を理解して動けるお前だから、きっと期待通り「幻想郷の為」になる働きを最後までするだろう、みたいな。

「報道機関の一員としての役割+文ちゃん個人の幻想郷愛」の両面から射命丸文の納得を引き出した可能性があるのです。

もしそうなら、天狗としてあるべき姿を示すと同時に射命丸文の精神・やり方にも寄り添って諭してきた……と妄想できちゃうのです。(だとすると飯綱丸様と文ちゃん⇔文ちゃんと霊夢さんの構図が非常に似通うんですよね。ここは願望が濃すぎますが)

 

そしてこの点が文果の一件より凶悪な理由です。

★個人としても組織人としても自分の意思を曲げざるを得なかった。
★自分の意思を曲げることに完全に納得させられてしまった。
★自分が直に目撃して知り得た事実なのに、嘘を報じざるを得なくなった。

かわいそう……。

かわいそう!

文果の一件でもそりゃへこんだでしょうが、逃げ道があったんです。
「月の民に利用されてる」事実はヘカ様からの又聞きだったのが一番大きい。人から聞いた分、実感が薄いですからね。

もしかしたら、この正義感の強い私がこんな捏造の記事を書いてしまったのも、月の民の何らかの能力かもしれない。きっとそうだ、そうに違いない。(東方文果真報 顛末書)

正義感が強いと自称してる文ちゃんかわいい。実際そうだと思います
だからこんな責任転嫁をして精神安定ムーブが取れる。私もそうかもしれないが月の民がもっと悪いのでは?ってことですね。

酔38話はそうはいきませんよ!
文ちゃんが自由に取材したうえでそれが丸ごと幻想郷の害に転落するところでしたし、そう仕向けたご本人から直接事の顛末を盗み聞くことになり、自分の非を納得させられ、直接見聞きした真実を報道するポリシーすら曲げるはめになった。

100%私が悪いです状態なんですよね文ちゃん。
日頃から正義や使命に燃えて新聞書いてる子にとって、それはあまりにも辛い。

しかも飯綱丸龍から天狗社会の圧力を受けた、というより、単純に自分の非を思い知らされたことが愕然顔の本質に思えます。

 

要は、飯綱丸様の地位ではなく、その実力にふつーに敗北したわけです。飯綱丸龍という個人に敗北した。敗北原因は自分自身の行動と信念というオマケつき。

社会VS個人の図で敗北したならまだ文ちゃんにも心のやり場があるだろうに!

しかもしかも、今回の飯綱丸様は「贈り物がしたい」という私欲で動きましたが、どこにも迷惑かけてません。むしろ幻想郷に利益を振り撒いている。

射命丸文が個人として取材に赴き、ありのままを伝えれば幻想郷に害を与えかけたのとは大違い。

私欲を完璧に叶えた飯綱丸様と私欲を抑えるしかなかった文ちゃん。

もうやめたげてよ!

 

飯綱丸様は文ちゃんに気付いていたのか?

気づいてるでしょのスタンスで書いてきましたが、実際のところ不明です。
ただ、千亦様に向けているはずの言葉の数々が射命丸文にガン刺さりしていることはご理解いただけるかと思います。

それに文ちゃん目線から見ればどちらでも大差ありません。

文ちゃんが飯綱丸様の言葉に愕然とした事実=文ちゃんは言葉を自分事として受け取ったことは揺るがないからです。

事実はどうであれ、自分に向けられた言葉と思ったことが文ちゃんにとっての真実なんですから。

 

飯綱丸様目線はどうなんだよ!
断定できません。気づいてた方がオタクライフに彩りが増えるのでそっちが嬉しいですけど。

仮説を立てるとすれば、飯綱丸様が文々。新聞の紅雪報道を把握してたことは事実であり、当然文がこの件を嗅ぎ回るかもと想像つくでしょう。

飯綱丸様の大仕掛け気質&リスク管理能力を信じるなら、文ちゃんが聞いていたときに備えて文ちゃん向けのメッセージを仕込んでおいた…かもしれません。

つまり飯綱丸様も文ちゃんが自分の仕業に気づいている可能性を考え、その辺に隠れて聞いていても対応できる話し方をしたと推測できます
その結果がなんとも判断つかないあの態度かもしれませんね。

 

他記事に続く! 次は飯綱丸様&千亦様編です!↓

konton-hakusai.hatenablog.com