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東方酔蝶華37&38話語り第2編 ~飯綱丸様と千亦様編~

本記事は酔蝶華37&38話語り第2弾となります。

第1編&第3編はこちらから閲覧できます。よろしければどうぞ。

konton-hakusai.hatenablog.com

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飯綱丸様と千亦様

主に文ちゃんの心をお騒がせした飯綱丸様。その目的は千亦様に市場を開かせてあげる、というもの。紅雪はそのための私的な贈り物なのでした。
えええーーーっ本気? 

一人のために幻想郷全部巻き込む? この人なんなの!?

おいおい復縁ですか…?とか、千亦様が飯綱丸様をお前呼びするの良いな…とか、二人の態度に温度差あるの最高…とか、いろいろ思ってました。
ゲヘゲヘ笑ってるうちに考えがまとまったので書き残しておきます。

 

酔37、38話タイトルの意味

かつて裏切り合った相手の願いを叶えるプレゼントと聞けば素敵なお話なのですが少し待ったをかけたい。

酔37、38話タイトル「商人と酔いどれは直ぐには立たぬ」に怪しさを感じるのです。酔いどれは酔っぱらいを意味します。酒呑みってことですね。

こちらのタイトルは既存の慣用句をいじったものと思われ、元はおそらく「人と屏風はすぐには立たず」。(※「人」は「商人」とする説もあります)

「人と屏風はすぐには立たず」、意味は「屏風は曲げないと立てないように、人も自分の意思を曲げていかなければ世渡りできない」というものです。

射命丸文のことじゃん!

初めて意味を知ったときビックリしました。タイトルの時点で文ちゃんの未来は暗示されていたんですね。

話が逸れましたが、ここで気になるのは「商人」の単語。千亦様は一般的に市場の神とされていますが、東方虹龍洞では典ちゃんが商売の神とも紹介しています。

もしタイトルの「商人」が千亦様を指すのだとしたら、千亦様も作中でなにか自分の意思を曲げたと解釈できるのです。

市場が開ければ満足したらしいと言われていたのに、意思を曲げることなんてあったか?
そんな疑問を次で考えていきます。

 

天弓千亦の望む市場

仕組まれた非日常をどう捉えるか

神社で市場を開けるようにと紅雪を人為的に起こした飯綱丸様。と、その紅雪に乗っかった千亦様。
彼女にとって市場を開く条件とはなんでしょうか?

虹じゃなくても珍しい何かが起きていれば、市は開けるの。(虹龍洞咲夜アナザーED)
どんな理由であれ特別な事が起こったら、日常と違う事をしてハレとケを分ける必要があるのです(酔37話)

珍しいことが起きていれば良いらしいです。

では市場を開ける「珍しいこと」とは具体的に何か?

実際に千亦様が市場を開いた/開こうとした事例は東方虹龍洞にて様々に確認できます。(EDの内容を含むので一部ぼかします)

【市場サンプル】
★月虹市場:虹が出たとき
★早苗アナザーED:ぶっ飛んでる祭りを開き、その傍らで市場を開催
★咲夜アナザーED:紅魔館を別の色に塗り替えて市場を開く

【他に市場を開ける事例サンプル】
★隕石が落ちた
★火山が噴火した

こうして見ると市場を開ける条件「非日常」とは珍しいことが「起きる」だけでなく、「起こす」のもOKらしいですね。
上記サンプル5つから見えてくる傾向として、「起きる非日常自然現象」と「起こす非日常イベント」は千亦様的にOK。

 

では紅雪は?

これはいわゆる意図的な自然現象(一行矛盾)=「起こす非日常自然現象」と言えます。サンプルにはなかったパターン。
千亦様は紅雪を「やはりお前の仕業だったのね」と言っており、飯綱丸様の企みだと予想がついていた様子。
飯綱丸様らしさを感じる点があったのでしょうか?

 

Q:意図的な自然現象は市場の開催条件として認められるのでしょうか?

A:実際に市場が開かれましたよ

そうなんですが、千亦様は紅雪が降った後、こうも言っています。

市場を開かないといけない(酔38話)
逆に市場を開かないと赤い雪が降ると言った非日常は穢れとなって人々に降りかからんとするかもしれません(酔37話)

「開かないといけない」…義務的な言い回しです。
個人的に市場を開きたい思いとは別に、市場が人々を守ることにも繋がるため、開催したとも取れるわけです。

結局のところ、市場が開かれた事実がある以上、意図的な自然現象でも市場開催に値します。「どんな理由であれ特別な事が起こった」んですから。

ですがその市場開催には必要性に迫られた、「義務」の側面が少なからずあったのです。

 

かねてから神社で市場を開く事が市場復活の近道だとおっしゃってましたので……
私からの贈り物に気付いて頂けて何よりだ

願い事を叶えるなんて簡単でしょ?(ここ好き) (酔38話)

飯綱丸様は得意げにそう言いました(好き)が、この「紅雪市場」とも呼べる市場は千亦様の願いそのものだったのでしょうか?

確かにお陰で神社で市場が開かれました

千亦様はこう言いましたが、お礼は述べませんでしたね。しかも苦笑しながら。

個人的に、千亦様は紅雪市場に不満があったと思っています。

初見で読んだ当初、虹龍洞での裏切り合いが尾を引いているため、千亦様はぎこちない態度を取っているものと思っていました。
が、それに加えて今回の紅雪を降らせるお膳立てが気に入らなかったのかも。

 

価値観の相違?

紅雪市場を気に入らない千亦様、と仮定した際、ヒントになりそうな東方虹龍洞の5面&6面のステージタイトルを引用します。
5面(ステージボス:飯綱丸様)「大空は誰の物なのか」

6面(ステージボス:千亦様)「誰の物でもない夜空」

好き。この対応してる感たまらんです。

5面タイトルは空に所有者が存在する前提の問いである一方、6面は所有者などいない、空は無主の空間だと主張しているのです。

有主と無主。この根っこからの食い違いがめぐちまの相容れなさを演出しているのかな~と思っていました。もしかしたら本当にそうなのかも。

 

飯綱丸様はただの雪を赤く着色して「私からの贈り物」に仕立てました。

この行為って、無主の空間である空を私物と見なしてる行為に他ならない、と考えられます。大空は誰の物なのか?=飯綱丸様(私)の物と暗に言っているわけです。
「星空を操る程度の能力」を持つ大天狗様はスケールが違うなあ。

でも自然現象に手を付ける行為を千亦様は良く思ってないのでは……?

 

結論。紅雪市場は確かに「神社で市場を開催する」形は完璧に叶えられたが、その市場開催までの過程は千亦様の望み通りではなかった。
過程は気に入らないが、非日常が起きたからには市場を開いて人々を守る義務があるため開いた。
かねてからの願いそのものは叶えられたため、その点については満足している。
こんな推測ができます。

千亦様が「飯綱丸の仕業」と悟ったのも、空に手を付ける行為に大天狗の面影を見たのかもしれませんね。


飯綱丸様の「贈り物」の真意

飯綱丸様の贈り物が実は千亦様の価値観を踏みつけにしていた、という締め方を上でしました。しかしこれでは偏向報道じみている!

贈り物は善意だったのか?
悪意だったのか?

ここについても考えておきたいですね。(悪意だったら相当悪趣味)

 

霊夢さんの発言から考える

結論から言うと、100%善意だったと思います。

その根拠として酔38話での霊夢さんのセリフがあります。

赤い雪は自然現象だったと言うこと
特に妖気も感じられず、何の悪意も感じられない

この「何の悪意も感じられない」のセリフが大きな説得力を有していると考えています。

何よりも、博麗の巫女である博麗霊夢が「悪意はない」と断定しているのです。
ちゃんと人心の不安を除くために巫女が動いた=幻想郷の調停者として動いたうえで、この発言をしている。

ここには強烈なメッセージ性があります。

異変解決者となった博麗霊夢の勘は非常にいい。これは東方Projectの大原則なわけで、その彼女が「妖気なし・悪意なし」と断じたならそれが正解なのです。

 

酔38話は実態が分からない・断定できないトピックが多いと感じています。

上記セリフは物語の骨格をはっきりさせて理解を助けるための……、つまり「こう読んでくださいね」という読者向けのセリフではないでしょうか。

 

いやしかし、善意100%で動いても価値観がすれ違ってるのはこれぞめぐちま!と思いつつも悲しいです。
飯綱丸様は千亦様のかねてからの願いをちゃんと覚えててくれたんですよね。そして願いを叶えようとしてくれた。それなのに、ってところが悲哀を感じます。

 

でも飯綱丸様の善意は本物だったと感じたので千亦様は不満を言えなかったと思います。
嬉しくない贈り物をもらっても、喜ばせようと思って贈ってくれた本人の前で、無下にできませんよね。
(千亦様が飯綱丸様の前で初めて笑うのが「願い事を叶えるなんて簡単でしょ?」の後なのもあります)

その結果が「だけど少し派手すぎじゃないですか?」となり、「異変混じりの自然現象」=「空を私物化して弄る行為」に対するマイルドな苦言として現れた……なんて妄想しちゃいます。

 

個人的結論

突如降った紅雪は仕組まれたもの!
犯人は飯綱丸龍!
その目的は天弓千亦の願いを叶えるあげるためだった!(ガチ善意)

これが物語の真相なのかなと思います。ストーリー構造は酔23&24話隠岐奈テレワーク回と似ていますね。
2行目までだと確かに怪しすぎて文ちゃんが調べたくなる気持ちも分かるかも。

だからこそ飯綱丸様は本気の善意であると強調して、明るくオチをつける必要があったのではないでしょうか。
射命丸文空振り案件としても隠岐奈回にそっくりですが、なんで文ちゃんはこんな精神ボコボコにされてるの……。

 

酔37&38話は飯綱丸様の善意でも千亦様には「ちょっとズレてるんだけど……」と思われてるかもしれないのが面白いところですね。
それはともかく誰か文ちゃんを慰めてあげて。

 

残りは余談編! その他細かい疑問についてちょこっと書いてます↓

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